Monday 11 November 2013

見つめ合う親子と血液検査

前回、血液検査しに行った病院の待ち合いで、人と目を合わそうと徘徊するおっさんの話を書いたけど、実はここにもう1人、私のことをちら見する人がいた。

待ち合いで座っていたときに、通路を挟んで隣にいた高校生くらいの女の子だ。マンマと一緒に何かを待っているっぽい。

私が外国人だからちらちらと見ているのか、私の持っている本が縦書きの日本語で珍しいから見ているのか、はたまたそれ以外なのかよくわからないけど、この子とも何度か目が合ってしまった。

見慣れない縦書きの本が珍しいのだろうとそのままにしておき、検査の番号が呼ばれたので検査室に行くと、私の前にその女の子がいた。

そうか、この子も血液検査だったんだ。

この病院の血液検査施設は、通路の両脇に小部屋がいくつもあって、そこで血液採取するようになっている。
その女の子は並んで待っている列の一番近くの小部屋に入ったので、ドアも開いているし、検査の様子がよく見えた。

血液検査を受けるのはこの女の子の方。マンマは付き添い。

左手をまくって台に載せ、右手は、、、。

マンマがぎゅーっと両手で握りしめている!

女の子は針が入っているところを見たくないので、マンマを見つめ、マンマは空いている女の子の右手を両手で握って、しっかりと女の子の目をのぞき込みながらささやいている。
多分「大丈夫よ、痛くないわ」とでも言っているのだろうか。

見つめ合う高校生くらいの女の子とマンマ。
これはこの子が何歳になるまで続くのだろうか。
この子はマンマに代わってこれをしてくれる男性でないと結婚できないのではないか、、、などと、また勝手に人の人生を想像してしまった。
意外と、こういう想像って面白いのよねん。

ちなみに私、注射されるのは嫌いだけど、血液検査は好きという、あんまり違いがないのではないかと突っ込まれる好みを持っている。
なので血液検査は常に凝視。(普通の注射もみるけど。)
血管が細いとか、探しにくいとか、そういうありがちなタイプでもあるので、血液検査するときは、いつも右腕の同じ辺りと決めている。
大概の検査技師(?)はその血管が採りやすいとすぐにわかるようだけど、稀に違うところに針を刺そうとする人がいる。
この場合には失敗が多いので「あ、そこは、、、」と刺される前に、生意気だろうけど言うことにしている。

イタリアに来てからも、違うところに刺そうとした若いお姉ちゃんがいた。
いつも通り「そこは出ないと思う」と言ってみた。

やっぱり、そんなことを言う患者は生意気。このお姉ちゃんは「いいわよ、やってみましょ」と目指したところにぶっさした。
血管に当たらない。ちょっと針でぐりぐりっとやられる。もちろん、痛いです。
お姉ちゃん、がんばるけど刺さらないものは刺さらない。「もうやめてください」と私が言い、針を抜いて、反対の腕へ。

こちらも刺さりにくいのはわかっている。試すけど、また血管に当たらずぐりぐりとやられる。こちらも当然、「やめてください。」

一応、「いつもここです」と言ってみた。
「んー、そうなの?」と疑わしげに(プロのプライドを傷つけられたから?)、「ここ」と私が指さしたところと同じ血管のようだけど、そこより少し離れたところに針を刺す。

何で言われたところに刺さないの?とため息が出そうだったけど、うまくやってくれるのならどうでもいいわと、また凝視。やっと入った!

でも、もしかするとこの私の『凝視』が相手にプレッシャーを与えるのかしら、、、。でも、採血は好きなので、凝視せずにはいられないのだ。

Sunday 10 November 2013

止まれないおっさん

先週、血液検査を受けに朝から病院の待合室にいました。

不思議な地元ネタがあって、「チェントロ(市の中心部)にある血液検査ができる施設は検査が甘い(間違っている、とも言う)ので、市立病院で受けた方がよい」らしい。
それまではチェントロにある施設の方が近いし空いているので利用していたけど、せっかくの検査で間違われちゃ困るよなぁと、ちょっと離れた市立病院まで行っている(それでも徒歩圏内)。

血液検査、尿検査など、時間のかからない検査をする施設と、診療予約、検査予約、検査結果受取などの手続きをする受付センターが同じ場所にあって、去年から番号呼びだしシステムがパワーアップして登場している。
そのために、150席くらいありそうな待合室の壁の数ヶ所に番号呼びだし用の液晶モニターが設置されていて、番号が出るごとに「ピンポーン」と音も出してくれる。

その日は割と混んでいて、血液検査の受付をした後、実際の検査まで30人待ちくらいだったので、待ち合いの一番後ろの席に座って待っていた。

いやに目に付くおっさんがひとり。
60〜70代くらいだろうか。
姿は普通なんだけど、とにかくひたすら待合室に設置された椅子の間を徘徊している。
一番後ろで本を読んでいた私には、目の端に入ってどうも落ち着かない。

番号も見なければいけないし、集中もできないので、読書をやめておっさんをしばらく見ていると、何かあるごとに人に話しかけている様子。
知り合いがいれば当然話しかけ、移動してはそこら辺の人に「あなたは何を待っているの? 何番(持っている番号を聞く)?」と話しかける。
そして、また知り合いの横を通ると、さっき話したばっかりなのにまた話しかける。
そこで立ち止まって話しときゃいいのにと思いきや、またすぐに動き出す。

動き出すたびにイラッとさせるのは、知り合い探しか、話の切掛けが欲しいのか、できるだけ人と目を合わそうとするのだ。

不覚にも私もこのおっさんと2度ほど目が合ってしまったけど、こういうタイプのおっさんは99.9%、アジア人、もしくは外国人とはっきり分かる人に話しかける勇気は持ち合わせていないので、0.02秒くらい目が合ってすぐに立ち去っていくだけ。話しかけてくれてもいいですけど。

さらに観察していると、どこかに行っては、毎回私が座っている椅子の列の前方に戻ってきて立ち止まり、モニターを見つめ、また歩き出す。おっさんがそこに立ち止まるので、私からモニターが見えなくなる。

でもこの止まっていられないおっさんはすぐに歩きだす。

そこでやっと気づいた。毎回おっさんが戻ってくる場所には、おっさんの奥さんらしき人がどっかと腰を下ろしていたのだ。
力強そうなかあちゃんの背中。どっかりと腰を下ろして、たくましすぎる足を閉じられないのが後ろから見てもわかる。

ふと思った。
おっさんは、このかあちゃん(奥さん)が怖くて一緒にじっと待っていられないのではなかろうか、、、。

このおっさん、長年このかあちゃんにこうして付き添ってきたのかなぁと、人の人生を勝手に想像してたら、あっという間に30人待ちの血液検査は私の順番まで来たように感じられたよ。

Saturday 9 November 2013

昨日のおばはん、またしゃべる

昨日、バスでときどき一緒になる「運転中のバスの運転手に自分の孫の写真を見せる」という奇行をするおばはんの話をしましたが、このおばはん、どうにもこうにもしゃべらないと仕方ないらしい。

今週はおばはんが乗るはずのバスより1本早いバスに乗ることがあった。
数分遅れて到着したバスに乗り込み、順調に走り出す。私が乗るバス停より2〜3個先のバス停からおばはんは乗ってくる。
おばはん、この日は1本早いバスに乗ってきた。

乗るやいなや、「今日は道路が混んでいるのかしら。このバス遅れてきたわよねぇ」と。

この日の運転手、無視。

そして5分くらい経ってからまたおばはんが、「今日は道路が混んでいるのね。このバスも遅れたでしょ」とおもむろに話しだした。
運転手に話しかけているはず。いやいや、別におばはん、おしゃべりしなくてもいいと思うんだけど。
おばはんは一番前に乗っている。数列後ろに私。もっと後部の座席には若いのが何人かいたけど聞こえるわけない。

運転手、また無言。
おばはん、やめときゃいいのに懲りずにまた繰り返す。
「今日は道路が混んでいるのね。このバスも遅れたでしょ」

運転手、さすがに「はい? 何か言いました?」と切り返した。
運転手、ここで話にのってしまったら最後だよ。おばはんは「今日は道路が混んでるわよね。このバス、遅れてきたでしょ。私、間に合わなくて乗れないと思ったのよ。でも遅れてきたから間に合ったの。いつも運転手はジャコモだけど、今日は違うでしょ。ジャコモはいつも10分くらい早く来る(←ウソやろ)けど、今日は遅かったでしょ」と、何度もバスが遅れたことを強調しながら、しらっと言う。決して怒っている口調でもなく、嫌味を言う口調でもない。
しかーし。運転手にはピキっと来た。

運転手「遅れてませんよ。時間通りに発車しましたから」と。

おばはん「いや、私、オフィスを出るときに時計を見て出てきたけど、このバスに乗れるとは思っていなかったの。でも乗れたでしょ。遅れてきたから乗れたのよ」と繰り返す。
そして「ジャコモの時はいつも早く来るから私も早く行かなければいけないと思って早めに行くんだけど、早めに来たつもりが遅れてきた前のバスに乗れてしまったわ」と、何度もそのバスが遅れてきたことをまた繰り返す。

確かに、数分遅れたかもしれないが、、、。ここまで繰り返されて「ジャコモは、ジャコモは」と言われれば、運転手もあまりいい気はしなかった様子。
運転手「早く来るのがいいってことではないでしょう。遅れることはありますけど、数分早く着いておくのは大事ですよ」と、いい加減にしてくれとでも言いたそうに話を流した。

それでもおばはん、同じことを繰り返す。文句を繰り返す。こんな人、イタリアにはとっても多い。

そして先を行くこと数分、園芸屋さんで働いているっぽいロレンツォという男性が乗ってきた。
このロレンツォもこの時間のバスにはよく乗り合わせる。よくしゃべるけど、物腰の柔らかい人の良さそうな男性。この日の運転手も、よくしゃべるおばはんも、ロレンツォとは顔なじみらしい。
おばはんは早速ロレンツォを捕まえ、このバスは遅れてきた、でも自分はたまたまオフィスを早く出てきたから間に合った、いつもは運転手がジャコモだから早く来ると繰り返す。
さすがに運転手も黙って聞いちゃいない。喧嘩腰にならないようにやんわりと言い返している。
ロレンツォも話を聞いているが面倒くさそう。

やんわりじゃおばはんは聞かない。運転手も面倒だったのか、若干声を荒げて「とにかく時間通りに発車してますよっ」と言い切り、何となく話は途切れた。

そしてまた数分後、おばはんの降りるバス停にきた。

降りる手前で運転手が「ジャコモは早く来るだの、仕事がよくできるだの、色々言ってましたけど、この話はまだ終わっちゃいませんからね。そんなにジャコモがブラボーだって言い続けたって運転手は交代するんですから。それに今日は時間通りに発車してますからね」と、降りるおばはんに一気に言い切った。

バスが停まるときに言うのは正しいかもしれないが、こうなってくると運転手の負け犬の遠吠えっぽくなってしまうのが悲しい。
このおっさんもせこいな。今更、やっぱり言うんかい。

私にはバスが静かになって、事故なく運行してくれたらそれでいいのだ。(いつも眠いし)
だからどっちも黙ってればいいのに。

それで結果的に、このバスは遅れていたのかどうかというと、、、。
遅れてたのだ、実のところ。
運転手のおじさん、きっと出発場所は時間通りに発車したと思うけど、出発場所から3つめくらいの私の乗る停留所で既に数分遅れていて、私が降りるところでは10分ほど遅れていた。

きっとこのおばはん、この後数週間はこのネタで話題は尽きないことだろう。

私は毎日バスに乗るわけではないので、常連メンバーとも思われていないし、話しかけてもこない。
面倒くさいので、ちょっとほっとしているけどね。






Friday 8 November 2013

黙っていられないおばはん(イタリア人間ウォッチング)

ここんとこアクティブにしておりますが、家では私、まさにこんなん。

ヴェネチアの古物商のウィンドウより

身体はきっとなめくじみたいに溶けていくのではないかと思うほど疲労感が激しい。
そして頭の中身も溶けていくのではないかと。

イタリアに来て4年目、確実に脳への刺激が減ったと思う。何しろ、話をしているときに何を話しているのか忘れている自分に気づくほど(イタリアに来たせいじゃなくて、前からそうだったかも、、、)。
とにかく、年齢のせいか、脳の働きがすこぶる悪いなぁと非常に強く感じる今日この頃。
先日から読んでいる脳の本に「ブログを書いて頭の中を文章で整理するトレーニングをするとよい」といったことも勧められているので、夏からあまり使っていなかったブログを活用しようかと。

何となく書こうかな〜と思って、忙しさに紛れて放っておいたネタを掘り出して書くことにしました。

最近見たおばはんのこと。
(バスネタが続きますが)バスでよく乗り合わせるおばはん。見た目はうるさそうでもなく、割と地味目な普通のおばはんである。
ここ3週間ほど、いつも以上に帰りの通勤時間くらいによくバスを利用しているので(私は出勤だけどさ)、このおばはんと乗り合わせることがよくあるけど、とにかく「早く降りてくれっ!」と毎度毎度強く願う。このおばはん、よくしゃべる。

最初に乗り合わせたときは、マジでびっくりした。
乗った途端に運転手の近くの席に座り、「○○は元気?(←運転手とはなじみ)」などかなりうるさい声で言いながらかばんをごそごそして取り出したのは、写真のアルバム。
それを開いて、なんと運転手へ渡す!

「うちの孫よー! こんなに大きくなったのよ!」って。

きゃー! 渡すか? 運転中のバスの運転手にっ!

開いたページを見せて終わるどころか、「ほら、次のページにね」と運転中の運転手にページをめくらせるっ!

おばはん、早くアルバムを閉まってくれーーーー!

どうやらこのおばはんと運転手(ジャコモというらしい)は同じ年齢くらいの孫がいるらしく、孫があれした、これできた、などの自慢大会がひとしきり繰り広げられ、、、しまいには、、、私、絶句。

運転手ジャコモまでが、運転しながら携帯を取り出し、片手にハンドル、片手に携帯でピコピコと孫の写真を探し始めた! 

もーやだーーーー! こんな客と運転手ーーーー!!

「あった!」と写真を見つけて、おばはんへ携帯を手渡す。
「まっ! かわいらしい♡」とおばはんもノル。
ここは道端の会話と違いますからーーーー! アルバムも携帯もしまえーーーー!

そんな会話が続いておばはんは道のり半分くらいのところで降りていく。
このおばはんと運転手ジャコモの組み合わせのバスに同乗すると、とにかくうるさい。

うるさいのはこのおばはんとジャコモだけではない。
会話を聞いているだけで名前がわかってしまう通勤メンバーたち。
私と同じバス停から乗る、東欧系らしいニーナ、園芸屋さんで働いているらしいロレンツォ(こちらも携帯で話している言葉を聞くと東欧系っぽい)、その他、ジージョ、学校の先生などなど、全員が乗り合わせてしまったときには、居酒屋ほどの声のボリュームになるからうるさくて溜まらん。

基本的に仕事は自宅作業とヨガ指導。世間の動きに触れる機会が少ない私なので、うるさいバスは嫌だし、運転は気をつけてくれとは思いつつも、観察が面白くて溜まらんのだ。

というわけで、しばらく観察ネタで続けていこうかと。次回もこのおばはんのお話を。